高速ハイハイで駆け抜けろ
俺の友達夫婦に2歳半の男の子がいる
この子は俺の交友関係の中で1番年長の子供なのだが、その子を見ていると本当に子供の成長というのは早いものだな〜と微笑ましくなる
今回はその子とのお話
抱っこをしたくない
俺の中で乳幼児に対して絶対的なルールがある
それは、首がすわるまでは絶対に抱っこしないというものである
人間というものは進化の過程で頭が大きくなり過ぎて、他の生物の子供と比べると非常に未成熟な状態で産まれてくる
こんな危険なものを扱って、何かあったらことである
乳幼児の取り扱いは本来危険物に分類すべきなのだ
危険物取扱者も甲と乙にプラスして幼を作るべきなのである
(写真はネットで拾った首のすわってない赤ちゃんの写真。これに対応出来るのはお母さんかアメリカの特殊部隊だけである)
という訳で生まれてから半年くらいは遠巻きに眺めたり、たまにほっぺをツンツンするくらいであった
さっそく嫌われる
首もすわり離乳食も食べられるようになった生後半年以降から、徐々に抱っこしたり遊んだりするようになっていった
だんだんこっちに慣れてきていたのだが、ある時友人に子供用のオヤツを食べさせてくれと言われた
そのオヤツはハッピーターンのような形で、味は薄いというかほぼなかった
なぜ味を知っているかというと、子供にあげるフリをして目の前で貪り食ったからである
いや〜、泣かれたね〜!!
めちゃめちゃ泣かれた!!
という訳でせっかく築き上げた友好関係も、「オヤツ泥棒」という烙印を子供に押されてパーになってしまった
ひとつの行動が人間関係を台無しにすることがあるので、皆さんもこのブログを見て他山の石として頂きたい
関係を取り戻す
そんなこんなで嫌われてしまったのだが、1ヶ月もするとほとぼりも冷め、また少し俺に心を開いてくれるようになってきた
この間実は毎週のように会って遊んでいたのだが、最初のうちは本当に心を閉ざされていて困った
どれくらい嫌われていたかというと、近付くと泣かれるレベルであった
これには俺もさすがに反省して、機嫌を取りなんとか関係をやり直せることが出来た
しかし考えてみると大人にとっての1ヶ月はあっという間だが、子供にとっての1ヶ月というのはかなり長かったのではないだろうか?
人生の体感速度を表したジャネーの法則というものがある
子供の時の1年は長いが、大人になると短く感じるというのを心理学的に表したものである
例えば50歳の人の1年はそれまでの人生の50分の1だが、10歳の子供の1年はそれまでの人生の10分の1である
これに当てはめて考えると、10ヶ月の子供に1ヶ月感嫌われたというのは、彼が俺と同じ37歳だったら、4年弱もの間嫌われていたということである
いやはや、彼が本当に子供で良かったと思った瞬間であった
高速ハイハイ
そんなこんなでマイナスをようやくゼロに戻せた彼との関係であったが、それをようやくプラスに出来る瞬間がやってきた
それは有料のベビールームで遊んでいた時のことである
その子はハイハイをかなり上手に出来るようになり、割と広いベビールームを楽しそうに動き回っていた
それを見てその子のお母さんも「上手に出来るようになったね〜」と褒めている
それを見て
負けられない
俺の心に火がついた
ハイハイなんぞ、こちとらとうの昔にやりつくしているのである
大人のハイハイ見せたる!!
そう思った俺は「うああああああっっっっ!!」っと奇声を発しながらハイハイをして、ハイハイするその子をごぼう抜きにした
そのハイハイの早いこと早いこと
全盛期のミハイルシューマッハもかくやというスピードであった
ぶっちぎりで抜き去り振り返ると、そこには何が面白かったのかわからないが、満面の笑みで喜ぶ子供の姿が!!
お母さんも笑ってた!!お父さんも笑ってた!!
みんなが笑顔になれた瞬間であった
子供の成長は早い
高速ハイハイで子供の機嫌を取れたことに気を良くした俺は、再びその技を披露するチャンスを待ち望んでいた
しかし、大人が本気でハイハイする為にはそれなりの広さが必要である
俺の家や友達の家ではちょっと狭かったので、なかなかそのチャンスは訪れなかった
2ヶ月後、ようやくそのチャンスは巡ってきた
その子と母親と俺とで、別の友達夫婦の家に遊びに行ったのだ
そこの家のご夫婦に数ヶ月前に子供が生まれて、その子を見に行ったのである
生後数ヶ月だったのでまだハイハイしたりは出来ないが、いつその時が来てもいいように広いスペースに柔らかいマットが敷き詰めてある
俺にとってもその時が来たようである
さすがに人の家にお邪魔していきなり高速ハイハイをかますのは礼儀違反になるので、2ヶ月前の話を友達夫婦にも説明したりする
友達夫婦も笑ってその話を聞いてくれ、それではその高速ハイハイをやろうかという話になった
子供は広いスペースとマットに気を良くし、あちこちにハイハイして動き回っている
今だ!!
立っている状態から素早くハイハイの体勢に移行し、高速ハイハイでその子を抜き去る
俺は振り返り笑みを浮かべながら、その子が憧憬の眼差しで俺を見つめるのを待った
しかし、その子の目に浮かんだのは驚愕の表情であった!!
その目からはありありと
「この人は大人なのに、なんでハイハイをしているんだろう?」
という困惑が見て取れた
……子供の成長は早い
たった2ヶ月の間に、「普通大人はハイハイをしない」という社会常識を身につけていたようだ
かくして、子供の成長についていけない、社会常識のない人間は俺一人となったのである