結婚式での珍エピソード
俺は未婚なので自分の結婚式には縁がないが、妹の結婚式や友達の結婚式に参列したことは多々ある
その中で普通未婚男性は体験できないことを2つしたことがある
それはブーケを受け取ったことと、バージンロードを歩いたことである
それは避けられない速度で
友人の結婚式での事
挙式が終わり、式場のテラスに移動して記念撮影となった
そこには長い幅広の階段があり、最前列に新郎新婦と親族が並び、その後ろに友人達が並ぶ
写真撮影はつつがなく終わり、その後ブーケトスをすることになった
最近は男性も参加できるブーケトスや、男性にだけブーケの代わりに小さいサッカーボールを投げることもあるが、この時は正真正銘女性だけのブーケトスである
写真撮影終わりに未婚女性だけ階段下に集まるように言われ、俺は写真撮影時の位置、階段中央より少し下くらいの位置にいた
何故だろう、この時からちょっと嫌な予感はしていたのである
新婦がブーケを投げる体勢に入る
本来なら後ろに山なりに投げ、新婦の2、3mほど後ろに立つ女性陣にそのブーケは手渡されるはずであった
しかし来たのである
もの凄いスピードでこっち(俺)に向かって
本来なら山なりの軌道をかくはずのブーケは、全くスピードを落とすことも、重力に引かれて落下軌道を取ることもなかった
俺の胸元に目掛けて、イチローのレーザービームと呼ばれる送球のような正確さで投げられたのである
飛んで来るブーケを見て、瞬時に頭に複数のことが浮かんでは消える
(強…………!)(速……)(避…………)(避けられない!!)(取るか!?)(男なのに?)
まさにレイザーにボールを投げられたゴレイヌのような状態である
本当に速すぎて避けることも不可能
そして避けた所で俺の周りも男ばかりで、他に取るべき適当な人もいない
そして何より、ブーケを誰も取れずに地面に落とすというのは、結婚式においてとても縁起の悪い悲しい出来事な気がする
取るしかない!!
そう覚悟を決める
しかもこの時カメラを構えていたから、使えるのは片手だけである
そして投げられたブーケは俺の体のど真ん中、ミゾオチの辺りにぶつかった
それを慌てて左手で抱え込む
良かった!!なんとか受け止められた!!
周りからは拍手が巻き起こり、俺は司会に呼ばれた
「ブーケを撮った方は新郎新婦と記念撮影をお願いします」と言われて、男なのにブーケをもらって、ノコノコと記念撮影まですることになったのである……
バージンロードを歩く
妹の結婚式、既に父が他界していたので、バージンロードを父親代わりに俺が歩くことになった
自分の結婚式で歩いたことはないのに、父親のポジションで歩くことになるとは……
てっきり何度もバージンロードを歩く練習をするかと思いきや、本場30分前にウェディングプランナーの女性と廊下で軽く練習しただけであった
バージンロードは1歩1歩歩くイメージだったので、そのように動いてみたが、「もっと普通に歩いていいです」とウェディングプランナーに言われる
そして最後は組んでいた腕を外し、妹の手を取り、新郎に妹の手を手渡すという流れらしい
そしていよいよ本番である
先に新郎が教会に入り、俺と妹と母で扉の前で待つ
これから挙式だというのに、全く式と関係のないバカ話をしてゲラゲラ笑っていた
今になって思うと、扉近くの席の人にはその笑い声が聞こえていたのではないかと心配になる
緊張感のない一家である
そして扉が開かれる
俺は今でもこの瞬間を忘れない
さっきまでバカ笑いしていた俺たち3人が、扉が開いた瞬間スっと真顔になったのである
人間こうも変われるものなのかと、ちょっと人間というものが信用出来なくなるレベルである
そして母が妹のベールダウンをし、俺と妹は腕を組んで歩き出す
プランナーの人から普通に歩くように言われていたが、普通に歩くと「ちょっと!!速い!!」と妹から小声で叱責が飛ぶ
自分としてはその後ちょっとペースダウンしたのだが、バージンロードを歩いている間に計3回も叱責される事態となった
今更だが、やはり妹本人との練習は必要だったのではないかと思う
そして新郎の元に辿り着き、俺が妹の手を取る瞬間がやってきた
本来なら父から新郎へと娘を託す、盛り上がりや感動が最高潮になる瞬間のひとつである
ところが
妹は全く見向きもせずに、新郎の元へ向かってしまった
結果、妹の手を取ろうと出した俺の右手は空に投げ出されたまま、その格好でしばし固まる羽目になった
こうして俺は
ヤクザの仁義を切るポーズで2人を見送ったのである