ももクロのライブに行く
昔友達に誘われてももいろクローバーZのライブに行ったことがある
ライブといっても人気があったので、単独ライブではなく夏の野外音楽フェスだったが
そのフェスでの話
ももクロに興味が出ない
俺の仲の良い友達2人がその当時ももクロに激ハマリしていた
ちなみに2人ともキモオタ系ではなく、見た目はイケメンだし、そもそも普段はスリップノットとかのハードコアやラウド系とかを聞いている連中なのである
それが一体なぜももクロ?
俺にはさっぱりわからなかったし今もわからないが、彼らが言うにはももクロとメタルやハードコア系の音楽とは親和性があるとのこと
その彼らがももクロのCD等を貸してくれるがイマイチハマらない
そもそも俺はアイドルとかが好きではないし、メタルもハードコアも好きではないのだ
スリップノットの曲を聴いた俺の感想は
「ずっとMotherFucker連呼しててうるさい」
だったのだから
ももクロのCDを聴いてもハマらなかった俺だったが、「ライブに行けば良さがわかるから!!」と説得されてライブに行くことになったのである
友が余計な物を持ってくる
確か真夏の8月だったと思う
暑い……
とにかく暑い
俺はそもそもライブ自体ほとんど行ったことがなかったが
真夏の野外フェスがこれほどキツイとは……
元々暑い時期なのに、人 、人 、人 でもうウンザリする
そんなクソ暑いなか、友達がとんでもないことを言い出した
「このマスクを被れ」
見ると、何やら手にももクロをイメージしたプロレス風のマスクが
実はこのマスクには見覚えがあった
数ヶ月前に行われた友達の結婚式で、余興でももクロの「チャイマックス」という曲を裸にふんどし、それにプロレス風マスクという出で立ちで、俺や友達数人で踊ったのである
このマスクは別にももクロが何かのPVで付けてたとか、そういうことは全くなく、たんに俺の友達がももクロのメンバーをイメージして夜な夜な手縫いした代物である
……なぜこんなものを、このクソ暑い時に
嫌がる俺だが、友達はしつこく食い下がる
その熱意に折れて、ももクロのライブ中は俺も付けることになった
ちなみに友人はフェスの間中ずっと付けていた
ヲタのゾーンに紛れ込む
そんなこんなでフェスも過ぎていき、いよいよももクロの出番となる夕方になった
前の出演者の出番が終わると、サッとステージの近くに移動して陣取る
やはりステージ近くは濃さそうなヲタばかりで、熱気がムンムンとしている
……果たしてこんな良い場所を、俺のようなファンですらないニワカが占有してしまってよいのだろうか?そんな思いがよぎる
いよいよももクロのライブが始まった!!
俺もとりあえず友達の言い付け通りももクロのマスクを被る
さすがステージ前である
俺の友達含めて、周りの人達はみんなももクロの曲に合わせて踊っている
みんな振り付けを覚えているようで、適当な踊りではなくちゃんと同じ踊りだ
しかし、俺にはさっぱりわからない
ステージ前のかなり良い場所にいながら、周りに一切合わせず腕組みして仁王立ちするしか出来ない
しかし、これは周りの人々にはどう見えているのだろうか?
一見すると振り付けも分からぬニワカに見えるが、そのオリジナルのマスクから只者でない雰囲気を濃厚に臭わせている
なんとなく周りがザワついているような気がする……
そして動き出す
ももクロのライブも佳境に入ってきた
3曲4曲と歌いあげ、会場も盛り上がっている
そんな中でも未だに動かぬマスクマン
周りの人達も最初こそ微動だにせぬマスクマンに怯えもしたが、ここまで動かないと「おいおい、置物かよw」と嘲りが強くなってくる(全て妄想であるが)
俺も「せめて踊れないまでも体でリズムくらい取るすべきだったか?」と、ずっと仁王立ちな事への後悔が少し入り交じりだしたその時……
夏菜子「それでは次の曲は〜!?チャイ!!マックス〜〜〜!!」
ももクロの赤い奴が言う曲名には聞き覚えがあった
そう、この曲は結婚式の余興で踊った曲である!!
仁王立ちの封印を解き、突如水を得た魚のように完璧な振り付けで踊り出すマスクマン
この曲は結婚式の余興の為に血が滲むような練習をしたのである
そんじょそこらのドルオタに負ける訳がない
終始圧倒的なパフォーマンスで踊り狂い、チャイマックスの締めの武藤敬司のあのポーズを決める
(本当にチャイマックスの最後はこのポーズなのである)
そしてポーズの残心から、またゆっくりと仁王立ちに戻る
こうして
謎のマスクマンはももクロのライブが終わるまで、また仁王立ちし続けたのである